Human Resource


ワーケーションの滞在先を多様化

近年、首都圏でもリモートワークが一般に普及しつつある中で、より郊外や地方へと滞在先を問わずに働ける環境が整ってきました。

そのように変わりつつある時代の中で、新たに仕事(Work)と休暇(Vacation)を融合した働き方として、「ワーケーション(Workation)」という言葉も生まれました。

以前、ワーケーションについて色々調べてみたところ、その本質について納得させてくれたのが、一般社団法人みつめる旅著『どこでもオフィスの時代-人生の質が劇的に上がるワーケーション超入門』(日経BP、2021)に書かれていた以下の記述でした。

実はワーケーションの本質は、「自宅やオフィスから離れて旅すること」でも、「自然の中でリフレッシュすること」でもないのです。


では、何なのでしょうか?
それは、「自分で決めること」です。

オフィスや自宅以外の自分の好きな場所を選び、WORK(仕事)とVACATION(休暇)のバランスも自分の好きなように決めて過ごす。これが、私たちの考えるワーケーションの定義です。
(中略)
ワーケーションという体験をしようとすると、このように自分で決めなくてはいけないことが無数にあります。そして、この「自分で決めること」にこそ、自分の人生の主導権を取り戻すためのきっかけが豊富に詰まっているのです。

同書 21~22頁

ワーケーションに限らず、リモートワークには自己管理が求められることは言うまでもありません。自由に決められる時間が増える分、一日の時間配分などは自らの責任で決めなければならない機会が多くなることが想定されます。

それでは、一日の自己管理ができるようになれば、他に制約されることなくワーケーションの自由度はうまく活用できるものでしょうか。

一般に、ワーケーションを行うためには、どこかの宿泊施設や居住物件を見つける必要があります。また観光と異なり、ワーケーション先の地域住民との交流や地方の課題解決などに取り組む場合には、現地に赴いてから新しい環境に適応するための努力が必要になるかも知れません。

今、こうした課題に対して、ワーケーションを呼び込みたい地方自治体が様々な企業と連携して積極的に取り組み始めています。そのため、今後ワーケーションが普及することにより、滞在時の課題は徐々に解消されることが期待されます。

では、ある地域で一定期間過ごした後で、他の地域でのワーケーションも経験してみたい、というニーズに対してはどのように応えることができるでしょうか。

一つの課題として考えられるのは、地域貢献型のワーケーションを行われている場合、現地の仕事先と滞在が一体となってワーケーションが行われているため、移住者の長期間の滞在を希望するニーズとの調整を図る必要があることが挙げられます。

地方自治体がワーケーションによる移住者を確保しつつ、ワーケーション・ワーカーの滞在先の多様化を図るための一つの手段として、マッチングを利用する方法が考えられます。

たとえば、国内の札幌、金沢、尾道、別府、那覇という5つの都市でワーケーションが行われており、四半期を単位とするプロジェクトであったとすると、四半期毎に新たな滞在先をマッチングさせる機会を設けることで、ワーケーション・ワーカーは多様な仕事や地域を経験することができる一方で、地方自治体は常時一定数のワーケーション・ワーカーを確保することができるようになります。

弊社独自のマッチング・アルゴリズムであるマジョリティ保証では、一部の人の高い順位の希望よりも、一人でも多くの希望を優先してマッチングを図る仕組みとなっているため、より多くの滞在者が他の地域への移動する可能性を高めることができます。

とりわけ日本は、地域ごとに独自の文化が育まれている上に、四季によってその風景も大きく移り変わるという、とても多様性に富んだ国です。仮に47都道府県の滞在先を四半期毎に移転したとしても、およそ12年間かけなければ、全国制覇はできない計算になります。

むろん、どの地域にどれほどの期間滞在したいかは人それぞれですが、これほど滞在先を自由に選べるようになった時代に、一度は働き方の選択肢としてワーケーションを通じて様々な地域に赴いてみることは、とても良い経験になるのではないかと考えております。

プロジェクト要員の再配置

従業員の視点では、誰もが希望の部署やプロジェクトに配属し、希望する業務を行えることが理想です。一方、経営者の視点では、異なる課題に取り組む立場にあることから、人事では多かれ少なかれ必然的に要望のミスマッチは生じるうるのが一般的ではないかと思われます。

近年は、HR テクノロジーや ピープル・アナリティクスと呼ばれる技術を活用した雇用者の人事業務を支援するツールが活用されつつあります。仮にそのようなツールを活用して要員配置の適正化を図った場合でも、マッチングによって一層改善できる可能性があります。

とりわけプロジェクトの現場では、配属後も様々なコンフリクト(衝突)が生じうるものです。日常的に生じうるコンフリクトが解消せず、小さなストレスが積み重なることによって、個人のパフォーマンスに好ましくない影響を与えてしまうことも想定されます。

コンフリクトが生じる原因として、プロジェクトの組織構造の観点から検討してみます。一般に、プロジェクトはリーダーを中心とする中央集権型で、配属される要員の流動性は低いものです。

こうした指揮命令系統は、比較的小規模なプロジェクトの場合には、メンバー間のコミュニケーションにもリーダーの目が行き届き、チームとして効率的に機能することが期待されます。

一方で、その規模が拡大していくにつれ、プロジェクト内の風通しは悪くなり、メンバー間で生じうるコンフリクトの兆候や、メンバー自身のモティベーションの低下といった負のパフォーマンスが、他者から気付かれにくくなる傾向があります。

プロジェクトが大規模化すると複数の分科会に分化され、通常はマネージャの配下に分科会のリーダーを所属させて、階層的に管理していく組織体制が編成される形になります。

こうしたヒエラルヒー構造における意思決定は、リーダー間の調整を経た上で、プロジェクト全体の最適化をマネージャが決断する、段階的プロセスが必要とされるため、プロジェクト要員の再配置はより一層困難になります。

大規模なプロジェクトにおける要員再配置の課題に対する弊社からの提案は、トップダウン型ではなく、Peer-to-Peer 型でプロジェクト要員のマッチングを実施することです。

以下のような3つの手順は、 P2P 型要員再配置における、もっとも簡略化された基本プロセスとなります。

弊社がこれまで数社の人事担当者にインタビューを行い、要員再配置におけるマッチングの活用可能性についてヒアリングを実施したところ、組織の要望を反映させた人事を行いたいという意向があるため、マッチングのみでの配置は難しいという回答を頂きました。

一方で、「従業員の要望をできる限り反映させたいという意向もあるため、マッチングの結果どのように要員配置が最適化されるのかについては関心がある。」といったコメントも頂き、人事担当者のための意思決定支援ツールとしてのマッチングのニーズが少なからず存在していることも確認されました。

このような人事特有の事情を踏まえて、弊社はプロジェクトの初期配置の適正化を図ることと、配属後の適正化を図ることは、異なる課題であると考えております。

プロジェクトに参画するためには、一定のスキルや経験が求められることが多く、仮に異動を希望するとしても、対象となる職位やポジションは、限定されるのが一般的です。

ただし、そのような制約は、あくまでも人事側で把握できている客観的な指標に基づく制約であるため、トップダウン方式で上長からの意向のみによって割当てられた職位には、「本人の意志」がまったく反映されない可能性があります。

この点、マッチング・アルゴリズムは、雇用者としての企業の意向と、被雇用者としての従業員の意向とを、合理的に調整する効果が期待されます。また、マッチング・アルゴリズムには、解決したい課題に応じた様々な種類のものがあり、それぞれのアルゴリズムは何らかの特性を有しています。

マッチング・アルゴリズムの特徴は、予め定められたルールに基づき調整を行うため、そのプロセスに第三者の恣意性が介入しないことが特徴です。したがって、当該アルゴリズムに一定の信頼性が得られるのであれば、極めて合理的な形で調整が行われます。

弊社の提案するマッチング・アルゴリズムであるマジョリティ保証では、一人でも多くの異動希望者が、本人のいずれかの希望を実現するように機能することが特徴です。また、上長による調整とは異なる、Peer-to-Peer 型により調整を図るため、人事担当者が意思決定支援ツールとして利用することにより、トップダウン方式では顕在化しない何らかのインサイト(気づき、発見)が得られることが期待されます。