Reuse


リユース市場の用途には、社会貢献、不用品処分、現金化など、様々な目的が考えられると思われますが、マッチングが最も適合するのは、買い換えなどに代表される、「価値の維持」ではないかと思われます。

「現在所有しているけれども、自分では今後も利用する予定はない。ただ、せっかく手に入れたものだから、同等の価値に相当する何かと交換したい。」

「いつも身に付けているアクセサリーだけれども、違うデザインのものが欲しくなった。」

「長年続けてきた趣味が続けられなくなったため、道具一式を手放したい。ただ、新たに別の趣味を始めたいものの、そのために必要なものを中古で揃えるほど資金的余裕もない。」

モノの価値を維持しようとする意識は、単に所有者本人の満足度を高めるだけでなく、同時にモノを大事に使い続けるインセンティブを高め、モノの移転を通じて他者に受け継ぐことができると考えています。

このようなニーズに対しては、所有しているモノを売却し、同等のモノに買い換えるという、お「カネ」を経由した売買によっても実現することは可能です。ただし、その場合には、価値が次にそのモノを受け継ぐ人ではなく、市場価格によって評価されるため、購入時の判断や所有時には、モノそのものの持つ価値よりも、価格を維持することが優先される傾向があります。

一方で、マッチングでは、自分が手放したモノの代わりに入手するのは、お「カネ」ではなく別の「モノ」です。市場価格を目安にして手放すタイミングを考える必要もなく、また売買時に損得勘定を考える習慣からも解放されることから、取得した「モノ」との付き合い方も変わってくる可能性があります。

また、売買の場合、中古品のような一品物では、原則として早い者勝ちのルールとなっているのに対して、マッチングではまったく異なるルールに基づいて、誰が何を得られるのかが決定されるため、ルールの設計の仕方によりマーケットの性格が大きく変わってくる形になります。

ここで、改めて売買によるリサイクルを検討してみます。たとえば、リアル店舗を訪問して中古品の買い取りを依頼した際に、想定以上に低い買い取り額を提示されて、肩を落として店舗を後にした経験はございませんでしょうか。

当時15万円で購入したバッグが、ほとんど利用しないまま品質の良い状態を保っていたにもかかわらず、1年後に持ち込んだところ2、3万円の買い取り価格を提示されることなどは、よく聞くお話ではないかと思います。

とはいえ、買い取りの際に価格を決めているのは買い取り業者の専門家であることは間違いなく、中古品市場で流通させるという目的であれば、それは妥当な金額といえるかも知れません。

しかしながら、それはあくまでも中古品市場で流通させ、早期に売却しなければならないというビジネスモデルを所与とした場合の話であり、本来的に中古品の価値を評価し、その価格が価値に見合ったものであるかを判断するのは、中古品の購入者であるはずです。

次に、個人間で売買を行うフリーマーケットのケースを考えてみます。この手段では、仲介手数料が比較的安いため、とりわけ不要品処分や現金化といった目的に適合した手段であると考えられます。

このような個人売買を「価値を維持」する、つまり何か同等のモノに取り替えるために利用しようとする場合でも、いったんは、手元の「モノ」をお「カネ」に代えた上で、それを資金に新たな「モノ」を入手する形になります。

この際、お「カネ」に換える手順を踏むことによって、当然に様々なコストがかかってきます。具体的には、期待していたほどの値段で売れないことに伴う値下げコスト、「モノ」の配送料、プラットフォームの手数料など様々な種類のものが挙げられます。

このようなコストの多くは、「モノ」を「モノ」で取引する相手が見つけられないから発生するコストであり、逆に言えば、そのような相手をすぐに見つけることができれば、支払う必要のないものがほとんどです。

実際、もし同等の中古品、たとえばデザインの異なるバッグやコート、アクセサリーなどを所有している知人たちが集まって、その所持品の交換希望がマッチングすれば、金銭的は一切損得を発生させることなく、交換を成立させることができるはずです。

とはいえ、このような交換は、知人間の交渉によって成立するものですが、それが実現できるのはお互い信用できる相手であるという認識があるからです。このような取引は、比較的小規模であれば成立しうるものですが、逆に集められる中古品の種類にも限界があり、魅力的に思えるものが集められない可能性があります。

それでは、このような形でお「カネ」を介さない「モノ」と「モノ」の取引を、大規模かつ効率的に行えるようにすることはできないものでしょうか。そのための手段を支援する技術の一つが、弊社が提案する Trueque Technology です。

Trueque Technology をベースとする取引では、オンライン上に何らかの「モノ」を出品するところまでは個人売買と同様の手続を行いますが、価格設定を行う必要はありません。

また自分が出品した「モノ」と比較して、交換を希望したい他者の「モノ」が見つかった場合、交換のリクエストを1つのみならず、複数表明することが可能です。この点は、いわゆる「欲望の二重一致」の課題を乗り越えるための工夫でもあり、より多くのリクエストが表明されることによって、多様なマッチングを実現するための循環サイクル(2者以上で「モノ」が移転する一方通行のルート)が形成されます。

このような経済主体間で形成される交換のためのネットワークを多様化させることによって、取引相手を見つけやすくするための技術が Trueque Technology です。

これまで中古品の取扱いは、無償で提供することや、現金化することが主な選択肢でしたが、新たに同等の「モノ」と交換するという選択肢を広げることによって、「モノ」を継承していく意識を高め、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えております。